反語表現

htt://www7.plala.or.jp/adis/diary/c/jiko.html#etc

  1. ヒロインが死んだ。こういう病気が原因でこういう手術を行った末にこういう死に方をした。
  1. そのときたとえば、エロゲーマーたちはヒロインの死よりも深く、その死因に傷つくだろうか?

こういう死に方だけはしたくない、と思える死因がいくつかある。第一に挙がるのは溺死。
溺死──それは一般的に最も苦しいとされる死に方。
(後略)

  1. またたとえば、エロゲーマーたちはヒロインの病気よりも深く、それが残した傷痕に傷つく

だろうか?
(中略)

  1. それとも、エロゲーマーたちの中ではもはやヒロインの死という事象を記号化してしまって

いるのだろうか?

 別に、エロゲマに限らず、人は外部を記号化して認識していると思われ。

・今までに食べたパンの数を覚えているか?
・ツナは、缶詰が海の中を泳いでいると思っていないか?
・石油は、どこからやってくるか知っているか?
・心臓移植の美談が流れるが、その心臓はどっから来たんだ?
・カルビが、タンが、ハラミが、そしてホルモンが何だか分かっているか?
・首吊りを、飛び降りを、その末路を見たことがあるのか?リスカは?
・死とか病気とか、多くの萌えコンテンツでは(それ以外でも)ONかOFFかのデジタルなものとして描かれている(ために、魂のやり取りで容易に復活する)が、そのようなものばかりではない。難病の末期、やせ衰えたヒロインを無理矢理抱くような、イヤなコンテンツはあんまり知らない。少なくとも、グラフィック上に表されることはなかったと思う。
 
==== 
 開心術を行った、お下げなヒロインの胸に残る痕、XPが進行したヒロインの全身に発生した腫瘍、そういうものを誰が想像するだろうか。いや、単なる線として矮小化された痕など、実体を反映するどころか、単なるアクセサリーとして機能しているではないのか。


 ということで、エロゲヒロインは身体性も、内面も少ししか持たない記号であって、その強度を維持するため、萌え要素とか内面(とかトラウマ)を注入しているのだ。傷も、死因も、単なるプロパティーで、それ以上でもそれ以下でもない。エロゲヒロインにとって、不幸とは物語の中断であって、だれか別のヒロインのルートに突入し、シナリオから排除されたとき、彼女の存在は潰える。ヒロインの結末(死を含む)が明示されないまま、主人公が舞台から退場する、これがゲームオーバーで、プレイヤーにとっては最悪の結末。それに比べれば、死も痕も、たいした問題とはならない*1

追記。反応どうもです。
面白ければいいのか、という問いには、
・面白ければいい(感動できれば、笑えれば、泣ければ)
という答えを正面に持ってきます。
でも、
・現実とリンクさせ、現実を誤解させるような描写は、可能であれば避けて欲しい*2
のと、
・フィクションなので、シナリオの要請はリアリティーに優先するけど、それでも深みのある演出をして欲しい
と要望しておきます。

*1:勿論、これは一般論で、作品に少しでも深く関わると、こういう態度に違和感を感じる。主人公が選ばなかったヒロインは、生きているのか死んでいるのか。観測者問題に踏み込むことになる

*2:たとえば、予防接種は無意味だと叫んだり