「萌えゲー」は「恋愛心理ゲーム」ではなく「擬似恋愛ゲーム」

http://bmp69.net/mt/archives/2006/11/post_457.html

まあ、「萌えゲー」が「恋愛心理ゲーム」ではなく「擬似恋愛ゲーム」に属するというのはどう考えても明らかな気がするわけですが、また一方で、「萌えゲー」が一般的な「擬似恋愛ゲーム」とは異なった性質を持っていることも確かです。「擬似恋愛」における恋愛の描写が主人公とヒロインのコミュニケーションの快楽を軸とするものであるのに対して、「萌え」は恋愛するヒロインの心理を鑑賞する快楽を軸とするものです。そのため、「萌えゲー」では擬似恋愛的な要素は大して重要ではなく、それどころか擬似恋愛的な要素がまったく存在しなくても「萌えゲー」は成立するのです。

「萌えゲー」と「擬似恋愛ゲーム」の違いを単なる差異として考えることも普通に可能ですが、先ほど論じた恋愛の「純愛」化・「恋愛心理ゲーム」の「擬似恋愛ゲーム」化の延長線上に「萌えゲー」を位置づけることも可能なのではないかと思われます。「恋愛心理ゲーム」においては主に3人以上の男女の恋愛の関係性が描かれ、『擬似恋愛ゲーム』においては主人公とヒロインの恋愛が描かれ、「萌えゲー」においてはヒロインの恋愛のみが描かれる、という風に。恋愛の「純愛」化が進行するにしたがって登場人物の関係性が単純化し、心理描写が形骸化していく。そして、「萌えゲー」に至ってついに焦点の当てられる登場人物はヒロインのみになり、心理描写は誰にも明け透けな記号に成り果てる。

 巧妙に他者を摂取する手法。