苦情処理の冴えたやりかた

 北の方に海が見えるある街。
 街にはスーパーを核にした、ショッピングセンターがありました。
 結構繁盛していますが、苦情も続出でした。
 繁盛しているので、レジが混みます。
 また、営業時間も10時から19時までしか開いていません。最近はコンビニが24時間営業です。
 「コンビニに行けば、24時間コーラとジャンプとポテチが買えるのに、なんでお前のところは、刺身に牛肉、お惣菜が24時間買えないんだ?」
 お弁当が売り切れているのを見ると直ぐに諦めて帰る住民も、スーパーだと強気になるのか、夜中にやってきては
 「無ければ今からご飯炊いて鶏肉揚げろ」
 と凄みます。
 で、出来上がったお弁当を受け取ると、
 「1時間も待たせやがって」
 と苦情を言って帰るわけですね。昼間ならすぐなんだけど。



 もちろん、沢山社員を雇い、24時間オープンできればいいのですが、それでは人件費がかさみます。
 社長は
「えーと、泥棒が入ったり、火事が起こるといけないから、一人社員に当直をさせましょう。もしなにかあったら、対応してね」
 としか言いません。
 で、交替で、精肉係とか鮮魚担当とか日用品担当とかが泊まっていますが、客はそんなこと関知しません。夜中にやってきては、品揃えが悪い、対応が悪い、弁当が出てくるのが遅い、と苦情がたまっていきます。


 そんなこんなで、スーパーマーケットは撤退しました。まだ、書店、ドラッグストアなんかが残っています。だけど、核となるスーパーが無くなれば、次第に衰退していくでしょう。皆が、レジの長さに怒り、弁当の出来上がりの遅さに怒り、刺身の品揃えの悪さに怒り、レタスの高騰に怒った、地元のショッピングセンターは無くなるでしょう。24時間営業のコンビニエンスストアで、コーラとポテチとジャンプを何時でも並ばずに買える、苦情の無い街はもうすぐです。


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