動物の行動の起源の話題は、政治と結びついているのだなぁ

http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C673208941/E20061227234804/index.html

著者の立場をひとことで要約すると「行動の複雑性を満足のいくように説明するには発達の観点が欠かせない」(34ページ)、ということになる。この立場から生得説が厳しく批判されているわけだが、著者の辛辣さがもっとも発揮されているのは、「複雑かつ精緻な行動は(遺伝子によって)デザインされているに違いない」という生得説の発想が創造説のそれと通底している、という指摘であろう(第2章)。

「生得的」とされている行動の多くは遺伝子のみによってデザインされているわけではなく、「種に特有の環境」、「通常発生する経験」、「動物の世界の通常の配置」といった要因にも左右される。ここでいう「環境」や「経験」には化学物質の勾配であるとか重力のようなものも含まれるので、たとえばジェンダー論をめぐって問題とされるような「環境」「経験」とぴったり重なるわけではないことに注意する必要はあるが、それでもアンチ・ジェンダーフリー論者を困惑させるであろうような事例も紹介されている。多くのワニや一部のカメ、トカゲなどを含む多くの動物は性染色体をまったくもっていないのだそうだ。確かに人間の場合には、性別を決める「初期の決定的な要因」がY染色体(の存在に付随する酵素の生成)ではあるが、それは必ずしも「性別」の本質ではないのである。