見下されたフードコーディネーター

 あるデパートの7階に、レストラン街があった。カレーにラーメン、寿司に天麩羅、ハンバーグ、パスタにスイーツ(笑)
 まあ、いろいろでいろいろなのだが、お昼時には行列ができる。


 そこで、ある男が名案を思いついた。
 「客を広場のテーブルに並べ、食べたいものを専門店から持ってくるようにすれば、待たずにいろいろな物が食べられるんじゃ」
 さっそく、デパートの支配人に申し出て、サービスを開始した。
 待たずに専門店の味が楽しめるのでそのサービスは大好評。
 

 ところが、ある日、天麩羅屋の人たちが、支配人の元にやってきた。テナントをやめます。
 自分の店の客を待たせているのに、テーブルからの注文を受け付けないといけない。キッチンが疲弊した。また、一品料理じゃなくて、安いコースばかり注文されるので、利益があがらない。板前も、お造りやカウンターで腕を振るえないのでモチベーションが下がっている。
 店が減った。
 その流れは止まらず、ハンバーグ屋が、パスタ屋が、抜けていった。専門店がなければ、コーディネートのやり様がない。



 最後に寿司屋が閉鎖され、コーディネーターは去っていった。
 皆で俺を見下しやがって。俺の言うとおりやっていれば、テーブルのお客さんは満足したんだ。これからは、寿司しかつくれない、天麩羅しか揚げられない専門店でなくて、カレーにコロッケハンバーグ、蕎麦にラーメンなんでも出せる大食堂をつくるべきだ。


 閉鎖された広場の中央には、デカルト像が撤去されずに佇んでいた。