"苦境に立つ地方書店に光を"

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20041001bf01.htm


 東北の書店事情を巡る取材で、2000年に閉店した青森県弘前市の老舗、今泉本店を見せてもらった。シャッターを閉め切った真っ暗な店内に明かりがつくと、主を失った棚が亡霊のように浮かび上がる。郷土の本のコーナーに返却先不明の数十冊の自費出版本だけがポツンと残されていた。

 1892年に創業した青森県最古の書店は、郷土出版も積極的に受け入れ、地元の文化人の交流の場にもなっていた。しかし、東京の大型書店の出店や商店街の衰退に抗し切れなかったという。「地域文化への貢献を社是に頑張ってきたが……」と6代目社長の無念そうな言葉に、なんともやりきれない思いがした。

 昔からある言葉だ。「日本はアメリカの――年前を歩んでいる」
 アメリカの住専の破綻は他人ごとだと思っていたし、水がワインよりも高いとか、離婚があたりまえとか、本はスーパーで売られるベストセラーだけになる、なんて"ありえない"と思っていた。
 本の意味、街の意味、知識の意味、それ自体が変わってしまった現在、地方書店の復権は困難なことになってしまっている。寂しいことではある。