あの手口を学んだらどうか 麻生氏の発言要旨

2013年7月31日 朝刊

 麻生太郎副総理兼財務相の二十九日の講演における発言要旨は次の通り。

 日本が今置かれている国際情勢は、憲法ができたころとはまったく違う。護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違いだ。改憲の目的は国家の安定と安寧だ。改憲は単なる手段だ。騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、われわれを取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げられるべきだ。そうしないと間違ったものになりかねない。

 ドイツのヒトラーは、ワイマール憲法という当時ヨーロッパで最も進んだ憲法(の下)で出てきた。憲法が良くてもそういったことはありうる。

 憲法の話を狂騒の中でやってほしくない。靖国神社の話にしても静かに参拝すべきだ。国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かにお参りすればいい。何も戦争に負けた日だけに行くことはない。

 「静かにやろうや」ということで、ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか。僕は民主主義を否定するつもりもまったくない。しかし、けん騒の中で決めないでほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013073102000110.html

前提となる歴史知識が、少なくとも自分の知っている史観とは異なるようなので、なにがなんだか。


第一に考えられるのはその国制上の欠陥である。ヒトラーの首相就任は国民多数の意思表明の結果ではなく、大統領の任命によるものであった。ナチスは国会の第一党であったとはいえ、決して過半数を占めていたわけではなく、ことにその最後の選挙が示したように、その支持者は減少しつつあったのである。

http://grev.g.hatena.ne.jp/REV/20130722/p1#a7

ワイマル共和国 中公新書 P-202

ドイツ国民はたしかに権威服従的ではあったが、決してすべてが無法者を好んでいたわけではないからである。しかし彼らは目前の苦境に追われて、社会と人間の存立のために最も重要なものが何であるかを認識することを忘れた。そしてそれを破壊するものが民主主義の制度を悪用してその力を伸ばそうとする時には、あらゆる手段をもってそれと闘わねばならぬということを知らなかった。それがヒトラーを成功させた最大の原因である。

P-207


ワイマール憲法の教訓がこのようなものだとすれば、国民に呼びかけるべきは、国民の意思を直接反映しないような「国政上の欠陥」を放置するべきではなく、わざわざ欠陥をつくるようなことは避けるべきであること、民主主義制度を形骸化させるような勢力には、狂騒を厭うべきではないこと、になるかな。