人間の測り間違い

 根が深いということは、生物学的決定論が我々の哲学的伝統の最も古い争点や誤りと関連があるということである。例えば、還元主義、すなわちある程度ランダムで大規模でそして還元できない複雑な現象を最小の構成部分の決定論的な振る舞いで説明しようとする願望(運動する原子によって身体の物質を説明したり、重要な素材の遺伝量によって知的機能を説明したりすること)。具象化、すなわち抽象的な概念(知能のような)を確固たる実体(数量化できる脳の素材のような)へ変えようとする傾向。さらには二分法、すなわち複雑で連続的な実体を二つに分割(例えば利口と馬鹿、黒と白)したくなる願望。そして最後には階層性、すなわち直線系列で増加していく価値に、事物をランクづけて順番付けようとする傾向(この場合、生得的知能が等級化され、続いて二分しようとする強い衝動によって、IQテストが考案された初期に好んで使われた用語を用いて、正常VS精神薄弱という形で二つに分割された)

P26

 大部分のことに彼ら*1は勝利を得たが、仮釈放、早期釈放、不定期系といった現代の諸制度が、部分的には生得的な犯罪者と偶発的な犯罪者に対して違う処置をすべきだと主張したロンブローゾのキャンペーンに由来していることを知る人は少ない

p266

 「彼らがまず学ぶべきことは、たとえどれほど重要性があるとしても、通常の教科ではない。彼らには意思、注意力、鍛錬の授業が与えられるべきである。(略)すなわち、いかにして学ぶかを学ばなければならない。」

p290
銅像練習」と呼ばれ、激しく動き回ったあとに止まって静止する遊びや、一枚の紙に、できるだけ多くの点を書き込む遊びを紹介。

 知能テストのもつ危険性は、十把一絡げの教育制度では、あまり知性の無い人や先入観をもった人が生徒を等級分けするだけでやめてしまい、自分たちの義務は教育することであることを忘れてしまう時にある。彼らは知恵遅れの原因と戦う代わりに、子供たちを等級分けすることになる。というのは知能テストに基づいたプロパガンダによる全体的風潮によって、低い知能指数の人々が生得的かつ絶望的に劣っているとして扱われることになるからである。」

*1:実証学派