雑記

イベルメクチン騒動

https://twitter.com/isaac_asimot/status/1576141961735835648
「3た論法」というのがあって、「投与した」「治った」「効いた」っていう『誤謬』である。
感染症が最たるもんだけど一過性の(ことが多い)疾患、変動性のある疾患なんかではプラセボだって治ることがある。風邪とか。
だからDBTが欠かせない。


あと、DBTでないケース・ノーコントロールスタディ*1では、介在する何かが主要因になる可能性がある。
「薬剤点滴群」と「点滴しない群」で「点滴群」が治った場合では、実は点滴のラクトリンゲル液が効果を示していて「薬剤点滴群」と「薬剤抜いた点滴群」では有意差無しということもありうる。


でまあ、『本当に効く』薬は、効かないとされても復活する。サリドマイドは薬害で発売中止になった。

サリドマイドは、それまで睡眠薬として繁用されていたバルビツレート類の副作用:呼吸抑制などを有さない安全な睡眠薬として、約40年前に適切な臨床試験が殆ど行われないまま世界中で使用され、その結果世界中に四肢の欠損するいわゆるアザラシ肢症の奇形児の大量発生を代表とするサリドマイド禍を引き起こした。世界的に生産および販売が中止されていた薬剤である。
 ところが、ハンセン病の結節性紅班を始めとする強い炎症性病変に著効する事が判明し、米国でもFDAが適応を極めて限定した形ながらも再認可に踏み切った。その後他の治療が奏効しない難治性の様々な炎症性疾患および腫瘍性疾患にも有効であることが分り始め、特に多発性骨髄腫は有効な事が多数の論文で報告されている。有害事象も10%以下の例で報告されてはいるが、ステロイド剤と併用せずに単剤での治療効果が得られる事から、前述のステロイド剤を含む多剤併用化学療法時に認められた治療効果はあるものの骨病変はむしろ悪化するというパラドックスを回避しうる。米国でも、造血幹細胞移植を含む強力な治療を受けたものの改善の認められない難治例で使用されている。

http://www.kanazawa-med.ac.jp/~yasum/thalidomide.html

薬にしろ、治療法にしろ、最初は一例報告とか主観とかでいいのである(※よくない)。

Ⅰ システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
Ⅱ 1つ以上のランダム化比較試験による
Ⅲ 非ランダム化比較試験による
Ⅳa 分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
Ⅵ 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

ただ、高次の実験を、それも公費で行うにはより低次の研究の裏付けが必要だし、イベルメクチンのCOVID-19への投与については『患者データに基づかない、専門家個人の意見』は煩かったが、『症例報告やケース・シリーズ』の時点で玉石混交だった印象。イベルメクチン騒動が終わった一年前頃には「新興国の国民には未治療の寄生虫感染が浸透していて、イベルメクチン投与で寄生虫が駆除され症状の改善と予後の改善に役立ったのではないか」という見解が出てたな。

*1:そんな言葉はありません