【佐藤辰男×鳥嶋和彦対談】

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2018年12月28日 の記事。1980年から2010年頃までの情景が面白い。

谷川さん自身も広く言えばオタクで、『エヴァンゲリオン』などああいうものも経ていたので、バリバリのSF小説に、『エヴァンゲリオン』以来の女の子のキャラクターの特徴をカテゴライズして、涼宮ハルヒを始めとする3人の女の子キャラに貼り付けて登場させたんだ。
 野崎はそのキャラクターに着目し、キャラクターを売りにした。難解な小説をアニメにしやすい形に落とし込んだんだね。だから『ハルヒ』は、小説もヒットしたけど、アニメになってからもの凄くヒットしたんですよ。

https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/181228/2


シリアス…というか、難解…というか、情報量の多いストーリーに、単純に見える分かりやすいキャラを乗っけたのがハルヒで、この「カテゴライズされたキャラ」が登場する必然性が設定のキモではあるんだけど、ハルヒ以後は(以前からも)ふつーに「カテゴライズされたキャラ」が増えてきて、ハルヒの専売特許じゃなくなってるし。

そうだね。そういうふうに女の子を類型化して登場させ、『ハルヒ』は、キャラクターの絵だけでカバーを作るなどしていった。そうやって編集の野崎はストーリーで売るんじゃなくて、キャラクターで徹底的に売ったんだ。

ドラゴンボール』では、「カバーの白地がいかに目立つか」ということを意識したんですよ。表紙って、売ろうとしてアレコレ盛り込んで一生懸命描けば描くほど、書店で平積みにされたときに目立たないんだよね。最終的に白がいちばん目立つわけ。『ドラゴンボール』の表紙は、真ん中に絵はあるけど、白が基調なんだよね。「どうすればコミックス売り場で目立つか」を意図的に考えてるんだ。

そういえば、ハルヒ

 鳥嶋さんの『ジャンプ』ような大きな部数の雑誌は、「パターン配本」という方法を採っている// それをライトノベルで踏襲されたらとんでもない返品になってしまうので、主婦の友社の時代【※】にわりと丁寧な棚展開をしてもらい、1000~1500店くらいの専門店にはしっかり厚く配本する「特約店制度」を採用したんです。

 その結果、専門店にはライトノベルの棚が増えていくけど、それ以上は広がらなくて。だからライトノベルは、「新刊は平台にあるけど、既刊本は撤去されてしまう」という苦しい時代が続く。
 それがじわじわと広がり、特約店が1000店を超えるようになってきて、ようやく既刊本も少しずつ売れ始めてね。それで再び僕らが角川に戻ってライトノベルを展開するときに、「特約店だけじゃダメだから、大型店にも棚を作ろう」となったんだ。

 ライトノベルはとにかくマンガと親和性が高いから、なかなかそうもいかないんだけど、マンガ棚の近くにあるといい。
 そのころ「マンガ文庫」のブームが1990年代の中盤から始まり、ちょうどその時期に小学館ガガガ文庫(2007年)やルルル文庫(2007年)を始めたのもあり、特約店だけでなく大型店舗でも、『ハルヒ』のようなライトノベルが売れるようになっていった。

 そこでようやく「きちんとした棚を作ろう」という話になった2000年代後半に、上手い具合に「マンガ文庫」が衰退し始めて(笑)、マンガを置いている一角に空間ができ、そこにライトノベルがスッと入ったんだよね。

漫画文庫って、そういえばあったな。衰退したんだ…
そういう市場は、電書に移行した印象。


コンビニの功罪

 もうひとつ要因としてあったのは、コンビニの存在。
 コンビニが増えたことで四六時中雑誌を買えるようになり、コンビニとしては外側に向けて並べることによって、ついでに缶コーヒーを買わせたりなどキャッチを作れるようになった。
 でもそれは同時に書店で買わなくなり始めたということでもある。それから駅のスタンドでも買わなくなり始めた。こうして既存ルートの流通が崩れていった結果、「マンガをもう読まなくてもいい」ということが起き、雑誌の時代が終わっていくんだ。

大規模書店、コンビニ、新古書店、そして携帯端末、スマホで書店は衰退していった。
コンビニへの雑誌供給を絞っていれば、書店が生きのこれたのかは謎。