ノン-インテリジェント受付

「もしもーし。山田太郎さん(仮名)さんからお電話でーす。緊急自体でーす」
「どこの山田太郎さん(仮名)? 調べると、5人いるんだけど。他の情報聞いた?」
「えーと」
……

(検索してみても、緊急事態が発生するほど関わってる山田太郎さん(仮名)はいないぞウチに)

……

プツン



「あー、オレオレ、山田太郎(仮名)っすけど、覚えてる?ちょっとこれからさ、キミんところの建物に緊急の用事があって行くんだけどさ、ついでにあえない?」
「は、はい、いいっすけど」

よかった。緊急に怒鳴り込むトラブルはなかったんや。




俺以外の人間全員、記憶力がよくて、氏名とこれまでの会話履歴を完璧に覚えているのかもしれないけど、俺はそうじゃない。もし、山田太郎さん(仮名)が、「当方の手落ちで甚大な被害を受けてクレームを入れ、対応を要請している山田太郎さん(仮名)」なら、電話に出るなり「あー、ちわー。どうしたんすか怒った声で。どうしたの?言ってみそ?ちょっとオイラ、記憶力なくてさ。どこの山田太郎さん(仮名)だったっけ?」って言ったら、火に油、エンブレムにパンとメガネ写真みたいな状況になるだろう。なんで、ニュートラルな応対が期待できる受付の段階で、一本松の山田太郎さん(仮名)とか、橋向こうの山田太郎さん(仮名)なのか区別をつけたいんだ。「オレオレ。○○さん回してくれる?」「わかりました。○○さーん」「あー、オレオレだけど」「ああ、二丁目の山田太郎さん(仮名)ですか」って人が大多数なのかもしれないけどさ。