ある男が、電車でメールを受け取った。

待っていた知らせであり、早速内容を読んで返信をした。するとその時。
男の前の老人が血を吐いて倒れた。隣の老婦人が名前を呼びかけるが返事はない。次の駅で電車は緊急停車し、救急隊、そして警察がやってきた。
男は逮捕された。
「えっ?私はメールを受信し、返信しただけだ」
「検死の結果、胃癌と判明した。お前の携帯の電波が癌の原因だ」
「そんな、たかが携帯の電波出力で癌なんて起こる訳がない」
「低出力・長波長電磁波の閾値なし仮説を知らないのか。お前の携帯の電磁波が、被害者の遺伝子を損傷させ、癌化させたんだろう」
「そんな無茶な」
「お前、被害者をかわいそうに思わないのか。人間性の無い奴だな」
「だいたい、もし、私の電波で発ガンしたとしても、5分や10分で出血するほど成長するわけないだろう」
「いや、被害者はこれまでにも、長い時間携帯電話の電磁波に暴露されていたのかもしれない」
「それ、私の責任なのか?」
「携帯電話の電磁波被害の責任逃れとは、ほんとうに無責任な奴だなお前」
「他人のことまで責任もてない」
「じゃあ、電流による直接作用かもしれない。大電流が流れ、胃に穴が開いたんだ」
「そんな電流が流れたら、皮膚や服も黒焦げになるだろ」
「あ、とにかく、お前が癌化させていないことを証明しろ」


そして裁判になった。男の陳述は全て捏造か、信憑性に欠けると却下され、有罪になった。市民は正義が行われたと大喝采。公判を待つ被告人の列を、ニーメラーさまがじっとみていた。