アイルランドのジャガイモ飢饉

http://b.hatena.ne.jp/d-grinder/20090421#bookmark-13069850
への返事。
「純度を高めるとウイルスに弱くなる」というコメントは、ニセ科学なので聞き流してほしい。


 インブリーディングを行うと、(免疫機能に関与するような)遺伝子の、機能しない変異がホモになっちゃって、ウイルスに弱くなるかも、みたいな、個体の話ではありません。ある系統が、単一遺伝子型で占められると、特定の病害で集団が壊滅する可能性がある、という話です。
 もし、系統の近親交配自体がウイルス免疫をすべからく弱体化させる、と受け取ったなら、こちらの既述ミスなのでご容赦願いたい。べし。



アイルランドのジャガイモ飢饉

しかし、1845年から1849年の4年間にわたってヨーロッパ全域でジャガイモの疫病が大発生し、壊滅的な被害を受けた。これは"Great Famine"と呼ばれて、歴史の方向を変えたとさえ言われている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%A2%E9%A3%A2%E9%A5%89

さらに、ジャガイモは通常前年の塊茎を植えるという無性生殖による栽培法を用いるが、ヨーロッパでは、収量の多い品種に偏って栽培されており、遺伝的多様性がほとんどなかった。そのため、菌の感染に耐え得るジャガイモがなく、菌の感染がこれまでないほど広がった。ジャガイモが主食作物であった原産地のアンデス地方では、ひとつの畑にいくつもの品種を混ぜて栽培する習慣が伝統的に存在し、これが特定の病原菌(レース)の蔓延による飢饉を防いでいたのである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%A2%E9%A3%A2%E9%A5%89

フィロキセラ

アメリカ原産のブドウはフィロキセラ(Phylloxera、ブドウネアブラムシ)に対する耐性を持つが、これらの根に寄生し宿主と共にヨーロッパ上陸を果たしたこの小さな虫によって、耐性のないヨーロッパの固有種の殆どが19世紀後半に壊滅的な打撃を受けた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A6

HLA

ある組織適合抗原を持っている固体は、特定の抗原に対して非常によく反応し、別の組織適合抗原を持っている場合には、その抗原に対してあまり反応しないという現象が知られています。たとえば特定の微生物に対する免疫学的な防御機能に欠陥が生じるということがあり、その微生物の感染が重くなります。

ウイルスのように複雑な抗原を持たない場合、EBウイルスを排除できない家系が実際に見つかっています。

http://www.sam.hi-ho.ne.jp/tootake/hla.htm#dok4

 HLAと病気の関係で知られているのは、B27と強直性脊髄炎、B5とベ−チェット病等が有名です。少し古いのですが、手元の資料でみてみますと下記のような例があげられています。

http://www.sam.hi-ho.ne.jp/tootake/hla.htm#dok4

鎌形赤血球症とマラリア

 地球上のある地方のある部族では、鎌形赤血球症(サラセニア)という先天性の遺伝子疾患が多く発生します。これは、赤血球の中にあり酸素を運ぶタンパク質であるヘモグロビンの遺伝子が変異し、ヘモグロビンが変化し赤血球の形も鎌のような三日月形になり、重症の貧血を起こす病気です。

http://www.qole-acct.co.jp/genetiss/gtcol2.html

 さて、この地方には熱帯性の致死性の伝染病・マラリアも多く発生します。ところが、鎌形赤血球症の患者は、マラリアにかかりません。
 その結果、「鎌形赤血球症ではない子供はマラリアで死ぬ確率が高い。鎌形赤血球症の子供はマラリアに罹らず成人できる」ということが起こります。
 つまり「成人し子供を残すまでの死亡率:鎌形赤血球症患者<正常者」なのです。病気の方が、長生きすると!

http://www.qole-acct.co.jp/genetiss/gtcol2.html

 遺伝子も、それと同じです。周りの状況によって、価値判断されているだけに過ぎないのです。ですからそこには、「異常」「悪い」という発想自体が、本来存在しないのです。

http://www.qole-acct.co.jp/genetiss/gtcol2.html