カンダタが叫び、糸は切れ、地獄に落ちてしまった、あとの話。
地獄*1に、蜘蛛の糸が垂れ下がっていました。うっかり地獄に落ちそうになっても、その糸に縋ると極楽に行けます。ただ、蜘蛛の糸は細いもので、あまり重いものが掴まると切れてしまいます。しばらくすると、蜘蛛はまた糸を伸ばすので、それに掴まれば極楽にいけました。
ある日、ある人が蜘蛛の糸につかまりました。ただ、残念ながら糸は切れてしまいました。怒って人々は、蜘蛛を踏み潰します。こんな細い糸を垂らしやがって。
そして、月日が経ちました。
糸は降りてきません。
しばらくして、彼らは良い事を思いつきました。立派なワイヤーロープを極楽につなぐのです。これなら、何時でも極楽にいけます。みんなで、ワイヤーロープを極楽に張りました。さあ、これで完成だ。祝賀会が開かれ、太鼓が鳴らされました。彼らは一斉にワイヤーに掴まります。
極楽が落ちてきました。
彼らはへこたれません。ワイヤーで届かないなら、ヘリコプターを買おう。
立派なヘリコプターを買いました。
これなら、極楽までひとっとび。
ローターが回り、離陸します。
そして…
まだ極楽には到達しません。
さて、こちらは山の反対側の場所。
やはり、細い糸が垂れています。
みんな、そろりそろりと、順番に糸を伝っています。
待ちくたびれたのか、大声を出す人がいるよ。
「現状維持で我慢しろってことかよ」
糸が切れないといいですね。
*1:本当は、地獄ではないけど、かといって天国でもない場所なのですが