こわれもの宅配便

 ある国に、宅配便屋がありました。
 まあ、世界でもトップクラスに安く、速いと評判でした。


 この宅配便屋は、一律料金です。ただ、中では、衣類食品など普通の荷物と、壊れ物生物など特殊な荷物で部署が違います。最近、この、壊れ物部門の人手不足が問題になっているのです。


 昔は、宅配便で送るのだから、壊れたのは、梱包が悪かったから、と皆思っていました。最近ではクレームの嵐です。それどころか、最初から壊れていたようなものでも、配達者の責任になります。訴訟訴訟。訴訟に嫌気をさした人は、配置転換を申し出たり、退職しました。


 また、衣類保存食品など、通常荷物は配達指定が緩く、担当は、9時に出社、5時に帰ります。夕方5時を過ぎたらどうするか?「壊れ物」シールを貼って、壊れ物部門に送ります。結局、壊れ物部門が24時間働かなくてはいけません。普通荷物は、ベルトコンベアに放り投げ、流れ作業で片付くのですが、壊れ物は一点一点慎重に扱わなくてはいけません。生物は、腐らないうちに運ばなくてはいけないし、通常営業時間外の対応も、壊れ物部門です。


 しかも、給料は運んだ荷物の数で決まるので、普通荷物部門の人がずっと給料が多くなります。さらに、クレーム訴訟弁償だと、自腹を切らなければなりません。普通荷物ではクレームは少なく、殆どは壊れ物部門に集中します。なんとかしてと社長に直訴したところ、「そうだ。じゃあ、保険をかけようか。きみたちがお金を出し合って、保険をつくろう」「そうそう。あっちの支社で人手不足なんだけど、暇な人はいるかい?」お話になりません。




 



 また、新入社員が入ってきました。みな、スーツを着て、企画や経営戦略、広報を目指しています。日の当たる本社ビルの裏手の配送所では、残った配達員で、必死に配達をしている
のだった。