火炎蜘蛛の糸

そこでカンダタは大きな声を出して、「こら、業者ども。この火炎蜘蛛の糸は己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋いて、のぼって来た。1ポート1ドル払え、払え」と喚きました。
 その途端でございます。今まで何ともなかった火炎蜘蛛の糸が、急にカンダタのぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて断(き)れました。ですからカンダタもたまりません。あっと云う間もなく風を切って、独楽のようにくるくるまわりながら、見る見る中に暗の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。



さて、それからしばらくして、稲光が垂れてきました。稲光に掴まって、こんどこそ、カンダタは天に昇れるのでしょうか。