進化論の話

ネオダーウィニズムにおける進化論の説明だと、既に存在している生物達は皆「遺伝子に突然変異が起こる→その中から環境に適応した遺伝子を持つ個体が生き延び、適応していないものは徐々に淘汰される」の積み重ねで進化してきたということになっています。ですが、それは本当に真実なんでしょうか?

 真実かどうかは分かりません。ただ、「遺伝子が生き残ったことを、事後的に適応と呼ぶ」「生き残らなかったことを、事後的に淘汰と呼ぶ」「遺伝子の変異によって、種にバリエーションが生じ、形質によって生き残りやすさに差が生じる」ことは確かだと思います。

四方哲也先生は大腸菌を使って次のような実験を行いました。大腸菌が生きていくのに必要なグルタミンを合成する、グルタミン合成酵素というのがあって、この酵素を作る遺伝子を取り出す→変異剤を投入→遺伝子にランダムな変異を起こす→変異した遺伝子を大腸菌へ組み込む、という実験が行われました。グルタミン酸からグルタミンをより多く作れる遺伝子のほうがより環境に対して有利であり、かつ、大腸菌のような原核生物のルーツはおよそ三十億年前にさかのぼるため、大腸菌タイプの生物は十億年以上は生きのびてきたと思われます。ではここで問題。野生の大腸菌と実験で変異した遺伝子を組み込んだ大腸菌を比べた場合、グルタミン合成酵素の活性はどちらの方が高いでしょうか?

ネオダーウィニズム的な予想では、野生の大腸菌のグルタミン合成酵素の活性は自然選択の結果、最適化しているであろうから、遺伝子に変異を起こした大腸菌のグルタミン合成酵素の活性は、野生の大腸菌の活性より下回りこそすれ、上回ることはないはずです。

では正解。実際の実験の結果、変異した大腸菌には、野生型よりも酵素活性が低くなったものがかなりいたのですが、なぜか五分の一近くの大腸菌は野生型よりも酵素活性が高くなってしまったのです。

自然選択の結果にも関わらず、グルタミン合成酵素の活性が最強に強まっていないのはなぜ? 最適化は十億年程度じゃ起きないの? そもそも「適応」ってなんなの?--http://d.hatena.ne.jp/./Maybe-na/20060531/1149079509

 菌内で、グルタミンの過剰在庫つくって嬉しいのでしょうか。過剰在庫は、多くの企業の悩みの種です。大腸菌が最適化されているとすれば、菌内で妥当なグルタミンの在庫調整システムを作っていても不思議ではありません。突然変異によって、グルタミンの生産システムが破綻すれば、活性が低くなるだろうし、かといって、コントロールを受け付けない、グルタミン生産システムも、やはり生存に有利とは思えないのですが。

 ダーウィンだか、ネオダーウィンだかスーパーダーウィンだかしらないけれど、"Random variation, Natural selection"以上でも以下でもないと思っています。


 元ネタは、「最強に強まった細胞」という話。「最強に強まった」戦艦が、どういう目にあったか考えると、ねぇ。


 追記:と書いてきたけど、釣られたのかな?