"出家日記―ある「おたく」の生涯"の感想の感想

http://d.hatena.ne.jp/yskszk/20051110#p1

基本的には著者本人の実体験しか書かれていないので、1980年代のオタク文化をめぐる史料性の高いものを期待したひとは、肩透かしを喰らうだろう。オレも最初は史料を期待して読んでいたのだが、次第に蛭児神建というひとに対する興味が勝る。長い文章を書き慣れていないのか、あるいは出版業界を長らく離れていたために勘が鈍ってしまったのか、唐突な論理の飛躍、時系列の混乱、本論と無関係の私怨などが目立つのに、するりと読めてしまったのは、このためだろう。

 これは、Comic新現実で読んでいたので、買うかどうかちょっと迷っている。1980年代preおたく文化をめぐっては、同じComic新現実吾妻ひでお氏などの記事があるので、そちらを読めばよい、ということなのだろう。シベール、破裏拳竜氏など、固有名詞はぐぐればでてくるし。
 いまは呼吸をするようにオタク文化を享受できる時代だけれど、Preおたく時代、必死でおたくにたどり着き、そこで自己を確立し、そしておたくコミュニティーから排除されて、そして確固たる自己を形成した筆者は、幸せなのだろうか不幸せなのだろうか。現在であれば、おそらく彼はルサンチマンの塊のようなサイトを作って、気に入った仲間に囲まれて本でも出版しながらいつまでもいつまでも(以下略、という生活が可能であったろうから。

蛭児神建はこの本で、「私は美少女を陵辱したかったのではない。美少女になりたかったのだ(だからこそ現実の幼女や少女が性犯罪の犠牲になるのは耐えられない)」と繰り返している。