ふと、あんぱんまんを見る。

 何故、バイキンマンは、悪行三昧を繰り広げても、退治されないのだろうか。バイキンマンは、あんパンチで撃退されても、死滅しない。きっと、あんぱんまんも、彼を死滅させようと試みたことがあったのだ。あんぱんまんのぶっとい何かをばいきんまんにぶちこんで、あついあれをどくどくと・・・バイキンマンの体を構成する細胞壁がどろどろ溶けて、悶えながら地面に染み込んでいく。で、その染みの中から、バイキンマン-Rが登場したのだ。
 ここで、JAMおじさんは気が付く。もし、バイキンマンを駆逐すると、あんぱんまんでも敵わない、多剤耐性バイキンマンがやってくるだけなのだと。バイキンマンを放置し、実害が出たときだけ撃退する。それが、結局、町の為になるのだと。
 では、ドキンちゃんは何なのか。おそらく、その多大なる食欲と、食パンマンへの執着がヒントなのだ。バイキンマンとは、ちょっと違うキンであろう。意地悪で自分勝手なドキンちゃんは、他人になんといわれようと、自分の中にエネルギーを蓄えている。彼女の想いが叶ったとき、食パンマンには菌糸が産み付けられ、そしてそれは安らかに眠る食パンマンの顔で増えていき、それが世界に撒き散らされていく―――フランスパンに、メロンパンに、チーズに、そしてあんぱん(のスペア)に取り付いて繁殖していくドキンちゃんの菌糸。たべものの町の終わりで始まりだ。
 と、そんな未来を考えたことも無い人々は、今日も馴れ合い芝居を繰り広げる、のだった。