原発事故と甲状腺癌

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20160304#p14

がんと確定した事例が増えると放射線との関連を心配する声が大きくなりそのような懸念の提唱者が人気を集めた。2013年に岡山大学の環境疫学者Toshihide Tsudaが国際学会で福島のスクリーニングで発見された甲状腺がんが異常に多いと主張する発表を始め、昨年の10月に全体としてがんが30倍増えたと結論する彼の結果をEpidemiologyにオンライン発表した。この主張は警鐘報道となった。

他の科学者は速やかに厳しく批判した。何人かの疫学研究者によると、Tsudaは高性能の超音波装置を用いた検査しなければわからなかったであろう福島のスクリーニングの結果を、伝統的な甲状腺の腫れや症状があって病院に来て甲状腺がんと診断される患者での100万人あたり3人程度という数字と比べるという基本的な間違いをしている。英国マンチェスター大学の疫学研究者Richard Wakefordは「そのようなデータを比較するのは不適切である」と福島の健康影響を調べたWHO専門家ワーキンググループのメンバーとして書いている。彼らの意見は先月Epidemiology に発表されたTsudaの方法論と結論を批判した7つのレターのうちの一つである。

被曝していない集団での比較可能なスクリーニングではどうなるかを見るために、Takamuraのチームは福島調査のプロトコールを使って遠く離れた3県での3-18才の4365人の子ども達を調べた。同様の数の結節や嚢胞とがん1例がみつかり、100万人あたり230のがん有病率になる。Scientific Reportsに2015年3月に報告している。他の日本の研究では甲状腺がんは100万人当たり300、350、そして1300というものすらある。「高性能の超音波技術で検出された甲状腺がんの有病率は福島県と日本の他の地域とでは意味のある差はない」とTakamuraはEpidemiology に書いている。Epidemiology へのレターでTsudaは超音波検査で見つかったものと臨床的に見つかるものの時間差を考慮してスクリーニング効果を補正したと主張している。彼は他の批判には答えていないしScienceからの複数回にわたる取材にも反応しなかった。

多くの科学者が偏った解釈(spin)には合意しないにも関わらず、Tsudaや活動家らはその発見を振りまきスクリーニングを支持する。「甲状腺検査は、放射線が原因かどうか関係なく、がんを早期発見して命を救う」とGeorgetown大学の放射線健康物理学者Timothy Jorgensenは言う。

しかし一般の人々や多くの医師ですらこの結果を全体の中で見るバックグラウンドを持っていないことが明らかである。ほとんどの甲状腺の異常は無視しても問題はないにもかかわらず、「小さな病変の発見が患者を不安にする」と福島県の健康管理調査副委員長のSeiji Yasumuraはいう。甲状腺がんと診断されたほとんどが、甲状腺を摘出した。多くの場合経過観察のほうがよいという根拠がますます増えているにもかかわらず。東京大学のShibuyaが加える。

韓国は教訓を提供する。1999年に韓国政府は僅かな追加料金で甲状腺の超音波検査を提供できる検診を導入した−そして甲状腺がんの診断が爆発的に増えた。2011年には1993年の15倍の甲状腺がんが診断されたが甲状腺がんによる死亡率は変わらない。韓国Korea大学のHeyong Sik Ahnらが2014年11月にNEJMに報告している。診断された人のほとんどが甲状腺の一部または全部を摘出し、多くは生涯にわたって甲状腺ホルモン治療を必要とする。この「流行」を止めるため、Ahnらは甲状腺のルーチン検査をやめるよう言っている。

Williamsは子ども達の甲状腺の結節や嚢胞はこれまで考えられていたよりはるかによくあることであるという根拠があり、正常とみなすべきだという。福島調査はそのような結節や嚢胞の「発生起源をより良く理解する」ことになりより良い治療法につながるかもしれないという。

津田派は現在どうなっているだろう。
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