"先天異常の発生頻度「大震災後の福島県」と「全国」で差なし"

第54回日本先天異常学会学術集会

 日本産婦人科医会では,北海道から沖縄まで全国の医療機関の協力を得て,1972年から全国の出生児の約10%を対象とし,生後7日目までの異常について大規模な先天異常モニタリングを行っている。これらの報告は,倫理委員会の承認の下に同センターにおいて集計解析され,さらに世界保健機関(WHO)の国際先天異常監視研究機構に連結して世界レベルでのサーベイランスが行われている。

 浜之上氏らは今回,同モニタリングのデータから1997〜2010年の先天異常の推移(122万6,370例)を検討し,頻度の高い先天異常に関して分析を行った。

 その結果,心室中隔欠損が1万出産当たり22.5例と最も多く,口唇口蓋裂が同13.3例,ダウン症候群が同10.4例で,先天異常児の出生状況はほぼ一定の傾向を示していた。また,東日本大震災後の2011〜13年に福島県から集積された結果(17万7,731例)でも,心室中隔欠損が1万出産当たり28.1例で最も多く,全国データと同様の傾向を示していた。

 同氏は,全国と福島県のデータの違いとしてまず協力施設の偏り(全国:やや大規模病院に偏り,福島県:県内の全医療機関)を挙げ,「報告する医療機関での高リスク妊娠率に差があり,同時に先天異常児を発見する機会にも偏りが生じる可能性がある」としている。また,「集計時期の違いには,出生前診断,新生児の診断の技術が年々向上していることの影響も考えられる。集計規模も大きく異なるため,福島県では報告症例が1つ増えるだけで大きく順位や発生頻度に影響する」と述べた。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2014/M47340072/