"みんなで考えよう!"

話を大腸菌にもどして。ケアンズ現象が事実なのか実験のミスなのかは私にはわかりませんが、アメリカのホールという学者が野生の大腸菌から活性が無くなったものを見つけてきて、同様の実験を行ったところやはり適応的に思えるような変異が起きたとか。グルタミンとは別の基質のラクトースを分解できなくなってしまった大腸菌ラクトースのみの環境に入れてみたところなぜか、ラクトースを分解できる変異が(たとえばブドウ糖などの培地と比べて)極めて高い頻度で起こってしまった問題。大腸菌に負荷を与えると変異を頻発するんだよ、変異自体はランダムなんだよ! という説明もあったそうなのですが、やっぱり不思議ですね。だってラクトースは変異剤じゃないんですから。みんなで考えよう!

いえいえいえ、もちろん突然変異も自然淘汰も現象としては確実に存在するんですよ。そして、カエルが鳴くのも、鳥が空を飛ぶのも、カッコウが託卵するのも、人が二本足であるくのも、ぜーんぶ、突然変異と自然淘汰で説明できるんだよ! ほーんとーかなー? みんなで考えよう!--http://d.hatena.ne.jp/Maybe-na/20060602/1149250509

 なんていうか、元の論文を読んでいないので細かな解釈はわかりません。
 おそらく、実験は正しかったと思います。あとは、解釈の問題でしょう。
 ラクトースが変異剤でなくても、変異は発生するかと思います。引用内の文章だと、自然選択が掛かったのか、それとも複製時に、なんらかの並べ替えが行なわれて、合目的な遺伝子配列に書き換わったのか、プラスミドのようなものが流通したのか、ちょっと判断できません。
 人間が二本足で歩いたり、村上ファンドが検察に事情をきかれる理由を、倫理・宗教・法律を持ち出さず、かつ情に訴える以外の方法で、"ぜーんぶ、突然変異と自然淘汰で"説明してください、と言われると大変困るのですが、カエルも、鳥も、人も、村上氏も、突然変異と自然淘汰からなる遺伝の仕組みに従って生まれたと思っています。もしかすると、私の知らない他のメカニズムがあるかもしれないけれど。

で、
http://d.hatena.ne.jp/Maybe-na/20060426/1146071029
を読んでみました。

生きとし生けるすべてのものは、さしあたって死ぬまでは生きている。ただそれだけのことではないのか。

そう思います。いや、皮肉ではなく。カエルも、鳥も、人も、さしあたって、死ぬまで生きているのです。で、事後的に、文化的な文脈で、進化しているとかしていないとか評価されるのです。主に、人間に。

同性愛をいずれ淘汰される突然変異個体だと仮定しても

 仮に、同性愛遺伝子というものがあったとして(それが、複雑な現代社会において個人の性生活に主要な役割を果たすとは信じがたいけど)、それが淘汰されるべきとかそういう「べき論」は、どうなのでしょうねぇ。変異で生まれた、もしくは先祖から引き継いだ遺伝子も、消滅するまで残っている。それだけのことかな。