ピエール・シモン・ラプラス『確率の哲学的試論』論

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1009.html

こうしてナポレオンとラプラスは(そしてベートーベンは)、「全体というシステム」を記述したいという理念と野望を、まったく同時期に現実化したわけである。

もっと重要なことは、そもそも科学ははたして初期条件の決定から構築されていいものかどうかということなのだ。

 パラダイムとかメタ科学なお話。現在の科学が『真理』であるかどうかは定かではないが、ニュートン力学を否定する国家は、砲兵戦に負けるものと思われる。着弾点は、初速と仰角と、修正項となる風向き、地球の自転、気温などによって決定されるのだ。文学者にとっての『真理』が何だか分からないが、砲兵出身のナポレオンにとっては、命中する理論がいい理論で、命中しない理論は悪い理論だったに違いない。
 科学の実効性について私は疑いを持たないが、適応範囲については慎重であるべきだろう。また、村とか町が精々だったシステムを、国家にまで広げた要素の一つに科学があったことは、

数学によって宇宙や世界のしくみを証明してみせることは、イギリスもドイツもフランスも、国家(王室)の威信をかけての計算合戦だったのだ。

 この通り。