あるところに

 レストランがありました。
 そこは結構おいしくて、客が集まっています。そこのソースが人気の秘訣でしょうか。
 ところが、最近、客が減っているようです。
 調べてみると、驚くべきことが分かりました。
 魔法使い達が、魔法を使ってソースを持っていってしまうのです。
 百歩譲って、店の味を「舌で」盗み、その味で勝負するのなら、ちょっとは許せます。でも、持って言ったソースで料理をつくり、「○○レストランの味!」と販売しているのです。
 シェフは怒って、魔法禁止!と叫びました。


 すると、若者曰く
「そんな、ケチケチしなさんな」
「ネットにレシピがあれば中高生だってキュイジーヌ・モデルヌくらい作れますよ」
「じゃあお前、なんか料理つくったことあるのかよ。包丁握ったことあるのかよ」
「失礼ですね。包丁は、料理に使う刃物です。カッターの長いのじゃないですか。辞典に書いてあります。あなたが、いくら料理に詳しいのかしりませんが、私は料理学専攻です」



 …隣では、開かれたソースのお店が営業中です。みんながダシの素を持ち寄って大きな鍋で煮るのでソースは結構おいしいらしいのですが、いかんせん、無料の店なので、具はイマひとつで、給仕にメイドさんがついたりはできず、大物メニューはありません。軽く食べるのにはおいしそうです。安いし。