半分になって、倍になるもの

普通は、倍になると倍額になる。
二個のアンパンは、一個のアンパンの倍額になる。
200gの豚コマは、100gの豚コマの二倍の値段だ。
二泊泊まれば、一泊料金二回分取られる。



ところが、そうでないこともある。
特急は、緩行の各駅停車より半分の時間で到着するのに、料金は割り増しになる。
8kgの自転車は、16kgの自転車の半分の値段… どころか、10倍になったりする。


で、半分だけど倍にしたいものがある。
ある機械があって、年額10万円で保守するって契約だとしよう。一年に二回点検に来てもらう。これを、持ち込みが面倒なので、年に一度にできないか。
顧客は、「二回で10万円なら、一回で5万円で済むんじゃね?」って考えるのだが、こちらは、「二回で10万円なら、一回で15万円欲しいわ」って発想となる。何故か。
標準的な整備間隔だと、「イエロー」のアラートが出た部品だけ交換したり、異状のある部分だけ調整すればいい。ところが、間隔を伸ばすとなると、「イエローまではいかないが、イエローに近い部品」を予め交換する必要がある*1。『一回の点検の「保証」は六か月で、年に一回の点検だと、その後の六か月は自己責任』で納得する人は、最初からそういうことは言い出さないので、点検間隔の延長は、異状が発生した際の責任や、その後の行動についてよく言い含めておく必要がある。「点検は一年で一回でいいって言った。だから、7か月後に異音が発生したが使い続けた。機械が故障したのは、年で一回の点検で良いって言ったおまえ等の責任」って言いだすのが常だからだ。


しかしまあ、要するに、顧客は「留保の無い生の肯定を!留保の無い生の肯定を!」と叫び、辟易したこちらが値引くのをニヤニヤ待ち続けるだけって話なんだけどね。

*1:標準的な状況なら、「六か月後にはイエローなので、その時交換しましょうね」になる。が、点検をサボるような顧客が、8か月後、「イエローが出たので交換に来ました」って来るわけないだろ