"店は安く買って高く売っている"

"中古ショップで見える「貧困」の真実"

1軒目の店で僕の近くに立っていた女性は不安げな様子でスマートフォンを売ろうとしていた。200ポンドほどもしそうなスマホを40ポンドで売っているのだ。買い取りされる前に、彼女はそのスマホで最後の通話をする必要があったようだった。たぶん、カネを借りている友人だろう。「30分後には持って行くから」と彼女は話していた。それから彼女はスマホを売り、データが入ったチップだけ受け取った。それから彼女は、店員に「20ポンド前後の」安い携帯を今この店で買いたいんだけど、と相談していた。

 ほんの20ポンドの現金を得るために高価な携帯を無駄にして安い携帯を買うことがどれほどばかげて見えるか、説明するまでもないだろう。明らかに、店は安く買って高く売っている。

話を盛り過ぎていると思われないといいが、この10分後に僕は、2軒目の中古店でまた別の女性がけっこう新しいテレビを売る(かもしれない)ところを目撃した。数カ月前に600ポンドしたものだという(クリスマスプレゼントだったんじゃないかと思う)。いくらになりますか、と彼女は店員に聞いた。140ポンドです、とのことだ。

 ところが彼女は、そのテレビを買い戻せるかどうかと聞いていた。その場合は、店が28日間まで商品を保管して、160ポンドで売るという。

 僕は即座に計算した。28日間めいっぱい引っ張って140ポンドを借りたのだとして、差額として20ポンドの利息を払うことになるのだとしたら、年率では186%だ。どう考えてもお得な取引ではない。テレビを店に持ち込んでまた買い戻しに来る不便さを考えればなおのことだ。

 実際のところこうした話はいつでもよく耳にするものの、1〜2月には特に急増する。人々がクリスマスに散財し、その結果を後悔する時期だからだろう。

 イギリスでは「貧困の罠」という言葉がある。貧しい人々が銀行からカネを借りたりクレジットカード(基本的に年利18%ほどだ)を作ったりすることもできないために、貧困から抜け出せないという状況を指す。

 彼らはおそらく、オークションサイトのeベイに自分で出品する方法も知らないだろうし、売却価格が高くなりそうな時期を待つような余裕もないのだろう。イギリスにはさらに、「貧者は救い難し」との言葉もある。正直、彼らはカネの扱い方についてまったく分かっていないように見えるからだ。


一回券を買う貧困者、って話があり、回数券や定期券の方が安いのに(安い場合に)、一回券を買う行為を指す。回数券の方が安いのに、回数券を買う一時金が出せず、一回券を都度購入するしかない。お金がないために、余計割高なものを買うハメに陥る、というものだ。