ネコは陰謀論者にならない

私見では、これは特定の思考法の問題というより、相当程度生得的な認知メカニズム−−デネットが「志向的スタンス」と呼ぶような−−に根ざした問題だろうと考えているので、BUNTENさんの表現の方がしっくりきます。「物語」による記述が「わかりやすい」のと同じ理由によることでしょう。「志向的スタンス」*1をとりうるようになったことで人間は非常に複雑な相互作用を行なえるようになったわけですが、「志向的スタンス」が適合しない現象にもそれを使ってしまうという弱点も抱え込んだ、と。ネコは(陰謀を企んでいそうな立ち居振る舞いにもかかわらず)陰謀論者にはならないでしょうから。

http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20080505/p1


 自動車会社の陰謀を嗅ぎつけたネコがいたような。



 さて、頭をこちらに向けて歩いてくるイヌを見つけたとき、「あの物体は動いている。こちらに移動している」と客観的なネコや、「この世界は、全て幻ではないだろうか」という唯心論なネコより、「あのイヌは俺を向いている。俺を食いたいのに違いない」と推定するネコの方が、その先生きのこる率が高そうである*1。円い閉曲線の中に、小さな円が二つ並んでいたらそれが目で、その目をむいている方向を察知する能力が、カンブリア爆発以降の生物にとって重要な能力だったろう。
 ただ、その代わり、目鼻のついていない現象に目鼻をつけて、雷は雷神様の天罰とか考えてみたり、集団を一個の仮想人格で代表させて、彼らが俺を殺そうとしていると考えたり、また、独立して起こっている事象を、特定個人や特定集団の陰謀に考えるのは、ある種の過剰適応なのかな、と思っている。


 まあ、ブックマークコメントを見て、ネガコメ戦隊を仮想するのは良い陰謀論です。

*1:ただ、唯心論を説くネコが、真っ先に逃げ出すような気もする