日本っぽい刀の話

切るっていうのは何か

 えーと、アルミ箔、紙、布、これを考えて欲しい。薄いカンナ屑を含めてもいいか。これで、岩を包む。同じくらいの重さでも、アルミ箔はすぐに「破れ」、カンナ屑は「割れ」、次に紙が裂け、布はなかなか破れない。それは、収縮性のある繊維で編むか織るかして作った「布」は負荷を分散するため、荷重に対して抵抗力を持つ。
 そんな布でも、鋏やカッターには弱い。これは、繊維一本一本は弱いため、尖ったもので一本一本繊維を「切る」ことにより、布が切れていく。動物の体も同じ構造で、皮膚や筋肉は細かな繊維からなっている。ここに、鋭い刃先を滑らせることで、皮膚の繊維を切っていく。鋭ければ「切れ」、なまくらなら「切れない」。

切るために必要なこと

 この、狭い意味での「切る」操作を行うために、刃先は鋭いほど良い。また、刃が柔らかい素材で出来ていると磨耗で丸くなるため、硬度が高い程よい。刃を滑らせて、着衣や皮膚を「切る」ために最適化されたのが、日本っぽい刀、という説がある。

切る、裂く、断つ、割る

 この、狭い意味での「切る」操作は、繊維性のもの、柔らかい革、皮膚、布にしか有効ではない。ある程度、硬いものは滑らせるように「切る」のではなくて、単純に力を加えて「断つ」「割る」「裂く」操作が必要になる。この場合、刃先の硬度や鋭さはあまり問題にならない。

結論

 刃を滑らせるように、「切る」のであればそれなりの刀が必要だし、ちょっと切っただけで刃に脂がついて「切る」ことができなくなる。しかし、鉈のように割るのであれば、刃先の性能は要求されない。台の上に対象を固定して「裂く」のであれば、それこそ紙すら切れないような刃先でも十分だろう。