「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか:「新本格ミステリを青春小説として読む」

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 近代国家の形成過程で動員されるイデオロギーとしての「青春」と、その文学表現である「教養小説=成長小説」が終焉するのは、常識的な理解では第一次大戦後のことだ。青年が成長した果てに到達するはずだった「成熟」が信じられなくなったとき、期間限定の概念としての「青春」も終わる(第一次「青春の終焉」?)。「失われた世代」とは、「青春」が失われた世代のことだった。

現実と虚構の間を区切るだけでなく、大人と子供を区切るこの線こそ「青春」と呼ばれる観念だ。線分には幅などないから、その線上に止まることなど不可能なのだが、それを「ある」と思いこんだとき、そこは境界の不鮮明な「霧」のような領域となる。

ミステリーの構造を、青春への問題意識と読む話。