"国民年金制度の歴史的検討" 百瀬優

http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/6605/1/KJ00000105619.pdf

適用範囲

拠出制

(2) 社会保険方式適用範囲の問題に加えて、国民年金制度の基本的な仕組みを拠出制とするか、無拠出制にするかが論点となった。結果的には、拠出制を基本とし、経過的及び補完的に無拠出制を認めるということになったが、こうした形に至った理由として、資本主義社会における自己責任原則との合致という理念的な理由に加えて、以下のような現実的な立場からの理由が存在した。具体的には、無拠出制にすると年金制度がその時々の国の財政需要の枠内に押し込められて、その安定性が損なわれる恐れがあることや、税という財源調達方式については国民の聞に心理的抵抗があり、税の増徴よりも新たな拠出保険料を創設するほうが実現可能性が高いといったことがあげられた。さらに、制度分立型の皆年金体制を取る以上、非被用者と零細企業被用者のためだけの年金に要する費用の全額を、全国民から徴収する税金で賄うことには合意が得られないだろうという理由も存在していた。 こうしたことから、国民年金制度の基本原則として、拠出制が取られたのである。

積立方式

(3) 積立方式社会保険方式を基本的な仕組みとする場合、その財政方式を積立方式とするか、賦課方式とするかが重要な選択となる。 国民年金制度創設時には、積立方式では完全な年金額の支給が遅れるため、制度開始時に充分な給付が行えないことや、積立金がインフレによる実質価値の低落に対して脆弱であるという理由から、賦課方式を支持する考えも少なくなかったものの、結果的には完全な積立方式が選択された。その理由としては、高度経済成長の只中にあった当時の経済状況においては、投資増大効果のある積立方式の方が消費増大効果のある賦課方式よりも望ましいと考えられたことや、人口老齢化の激しい日本において賦課方式を実施するのは将来の負担能力の面で問題があることがあげられている8。また、官僚側では、賦課方式にすれば、年金制度が政治家によって利用される恐れがあることを懸念して、積立方式を守るという態度が取られていた。

まとめ

国民皆年金体制を達成するためには、制度創設時の社会的・経済的・政治的条件のもとで、国民年金制度は、既存の被用者年金制度の未適用者を対象として、積立方式で運営される社会保険方式を基本にせざるを得なかったと言うことができる。


あるひとの、ある論文であり、これが当時の全てである、なんてことが言えるのかどうかは分からないが、「当時」、こういう制度が発足した経緯はなんとなく伝わってきた。