フィッシャーのミルクティ

閑話休題,その中のある婦人が,紅茶にミルクを注ぐのと,ミルクに紅茶を注ぐのとでは味が違い,自分にはそれが味わい分けられると主張した.周りの人たちは,そんなことはあり得ないと一笑に付したが,その場に居合わせたロイド眼鏡に髭を蓄えた紳士が,それじゃ実験してみようじゃないですかと言い出した.この男性こそ,この連載でも何度か名前の出てきた,ロナルド・エイルマー・フィッシャーである.

その場にいた人の証言の聞き書きがあり,それによると,この婦人はフィッシャーの準備した8つのカップを,1つ残らず間違いなく言い当てたとのことである.

さて,この時にフィッシャーが考えたのは,そもそもこの婦人の味わい分けの能力がないとしたら紅茶の入れ方を言い当てる確率はどうなるだろうか,ということであった.もともと,味わい分けの能力がないのであれば,当たるか当たらないかは1/2の確率である.1杯目に当たる確率は1/2,2杯目も
続けて当たる確率は1/2×1/2=1/4.このくらいまでなら25% の確率なので,まぁまぐれでもあり得るかなという感じがする.しかし,3杯目も当たると1/2×1/2×1/2=1/8=12.5%,更 に 続 け て4杯目も当たると6.25%,5杯目も当たってしまうと,3.125% にもなり,さすがにこれは何か種か仕掛けがありそうだと疑いたくなってくる.8杯全部を続けて当てるということは,(1/2)8=0.39% の確率


1935年出版の実験計画法

この本で打ち出されたのが,有名なフィッシャーの3原則であり,20世紀の統計学に大きなインパクトを与えることになった.特に「ランダム化」の概念は,以前にこの連載でも簡単に触れたが,今や,臨床試験になくてはならない基本的思想であり,かつ統計解析を行う上での前提となっている.

ABXテストはこのへんで
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