軍事支出は景気に逆効果との論文が。

以前、ロバート・バロー第二次世界大戦時の支出から財政乗数を計算し、クルーグマンの批判を浴びたことを紹介した*1。その後のバローの動きはあまりフォローしていなかったが、ふと気がつくと、先月末のvoxeuで、バローが国防費を元に乗数効果を推計した共著論文を紹介していた。それによると、推計された乗数効果は0.6から0.8の範囲であり、非国防費の乗数効果も似たようなものだろう、とのことである。

http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20091114/military_spending_and_economic_growth

一つは、「多額の国防支出は失業につながる(Massive Defense Spending Leads to Job Loss)」と題されたディーン・ベーカーの小論(11/11エントリ)。それによると、ベーカー率いるCEPRがかつてグローバルインサイト社(旧Data Resources Inc.)に委託して行なった研究では、以下のような結果が出たという。

GDPの1%(イラク戦争のコストに相当)だけ国防費を継続的に増やした場合、20年後の経済は0.6%小さくなる。
それは、70万近い職が失われることを意味する*2。
職が失われるのは主に建設業と製造業で、それぞれ21万人と9万の職が失われる。

うーん。
軍事にしろ、非軍事にしろ、目先の一定の景気刺激効果はあるが(20年後は知らん)、軍事支出は波及効果が民生部門に比べて小さいので、景気刺激策としての軍事支出は正しくない、っていう見解に賛成したい。国防としての軍事支出には副次的な景気刺激効果はある、程度ならまあ。