never ending stories

本編が面白くないから読むのをやめたのだとしたら、所詮自分がその程度の興味しか持ち得なかったということで、その結末だけ知っても意味がないとか。
http://d.hatena.ne.jp/megyumi/20060708/p10


 男は幸福の内に死を迎えた。生前の善行を讃え、神は彼に死後の世界を選ばせることにした。
 「こちらが天国だ」
 そこは荒涼とした荒野で*1、見渡す限りの荒地であった。そこで死者たちはトボトボと歩いていた。
 「こちらが地獄だ」
 そこには立派な図書館があり、見渡す限りの書物が並んでいた。そこで死者たちは熱心に本を読んでいた。


 「こちらにします」
 男は図書館の方に歩いていった。
 本好きの男は、早速本を読み始めた。現世から死後の世界までの間、活字がなくて退屈していたのだ。不老不死の超能力者が敵を倒していく話。人工的に作られた人間と共に、ロボットを駆使して戦う話。唯我独尊な魔法使いが神や悪魔と戦う話。動物の頭を持った戦士が、傭兵上がりの王らと戦う話。中世の中近東をモデルにした、王子の話。まったくもって退屈しない。


 しばらくすると、男も退屈を感じてきた。
 そして司書に尋ねる。
 「私は、いつまでここにいればいいのかね?」
 「読み終わるまで」
 「いつになったら終わるのかな」
 「彼らが書き終わったら」


 司書が指差す方向には、ペンを走らせるマンガ家、タイプする作家、なにやら相談をしている一個大隊規模のドイツ人の群れ、そしてテニスを楽しむ男の姿があった。彼が本を読み終え、荒野を越えて転生者の列に加わるまでには、当分時間が必要になりそうだ。

*1:RR?