"スポーツカー不振"

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(2006/7/7)

自動車が発展途上にあり、一部の好事家だけのものだった時代、自動車ピラミッドの頂点に立つのは、高性能なスポーツカーでした。
なぜなら、自動車メーカー各社は「1キロでも速く、1馬力でも多く」の掛け声の下、性能向上にやっきだったからです。
スポーツカーは、まさしくその頂点を具象化したものだったのです。

一般のユーザにとって大切なのは、時速300キロを出せる高出力などではなく、人がたくさん乗れたり、荷物がたくさん積めるといった、原初の自動車に要求された基本性能。
そして、「カッコイイ」「カワイイ」といったような、自動車の基本性能とはかけ離れた付加価値の部分です。

なにやら取り止めもないことを書きましたが、要するに、一部マニアが開拓した新天地は、後から入ってきた一般人によって荒らされ、初期の精神を失い、蹂躙される。
そして我々は、その片隅に追いやられ、さらには、

 「あいつら、キモい」

と冷ややかな視線を受けることを甘受せざるを得ない……

こうした噴飯ものの屈辱事が、過去何回も繰り返されてきたのだなぁ、と、感慨にふけってみました。

 エンジンの性能も、車体の性能も低い頃は、その出力と重量の割り振りが大変でした。
 大きな車体に、大きなエンジン、コーチビルダーが立派なボディーを乗っけると、快適でバカ高く、重心が高くて走りの悪いクルマの出来上がりです。
 重心を下げた専用の車体に強力なエンジン、空力に優れたボディーを乗っけると、スポーツカーですね。バカ高いです。
 スポーツカーのような車体に、かなり強力なエンジンを載せ、快適なボディーを乗っけると、快適にスピードの出る車の出来上がり。これが本来のGTで、超高い車でした。現在の我々からすると、自家用ヘリと自家用ジェットみたいなものでしょうか。

 で、時代は下り、乗用車の性能も上がり、エンジンも進歩してきました。安い乗用車の屋根や快適装備を取っ払うと、それだけ重量が減り、重心も下がり、運動性能があがります。ブリティッシュライトウエイトですね。ボディーの設計が上手になってくると、普通のクルマなんだけど、格好だけスポーツカー、が生まれます。アイアコッカのスポーティーカーです。
 そして、量産技術の進歩で、「プアマンズポルシェ」と言われる車が登場します。RX-7、Z、914(w。プアマンでも「スポーツカー」に乗れるようになり、スポーツカーの魔法が解けたのかもしれません。


 車に乗ることが、赤いファミリアにサーフボードを乗っけることが、アウディーにBMWソアラに黒いプレリュードにシルビアが、カンガルーバーをつけたパジェロが、ローダウンしたワゴンが、幸せをもたらすと信じられた時代があって、今は何を買うと幸せがもたらされるんだろう。