鉄道模型あれこれ

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060317/1142618237

話を戻すと、件の女性は夫の鉄道模型を捨てたのではなく、業者に売った。また、売って得た代金は模型の所有者たる夫に渡そうとしたことが伺える。近代的な心の持ち主である所以である。その後の彼女の凄まじい後悔は、たんなる罪悪感というよりも、その所作が夫を自由に処分することが可能な存在にしてしまうことに通じていることに気付いてしまったが故の戦きなのではないだろうか。

誰でも(私を含めて)、本来自由に処分することが不可能な存在を否定してしまうという振る舞いを、知らず知らずに、悪気もなく、或いは善意さえもって、しているのかも知れない。それに気づき、悩んでいるということは、彼女が倫理的な人であるということだ。なので、軽々に彼女を論うということはできない。

 夫が、件の女性のハンドバッグだか本だかアルバムだかを「売却」し、その代金を女性に渡し、「悩め」ば、対等。自分の所有する何かの固有性は肯定しつつ、夫の所有物の固有性は否定するのであれば、著しく非対称だ。女性の倫理水準について考えるのは困難だが、その非対称性をみな指摘しているところ。
 まあ、いろいろな言い方ができるけど、「理解不能な個人を理解する」作業が面倒なので相手の理解不能な点を廃棄して理解可能に、じゃなくて売却という近代的な作業で理解可能にしたら、そこには理解可能で交換可能な薄っぺらい人間が佇むのみ、という、民話のようなお話。傷つくというより、感動とかをつかさどるクラスタが、まるごと抜き取られた、という感じ*1
 配偶者への暴力、人格否定、抑圧は、男性が女性に対するものが圧倒的におおいと思うけどね。

*1:憑き物が落ちた、と肯定的に取るコメントもあった。しかし、落として良かった憑き物とは思わない