キャラ立ちの二つの属性

http://d.hatena.ne.jp/izumino/20060124/p1
http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20060123/p1

 物語において、キャラクターが立つ瞬間というのは、品物の引換券が、通貨になる瞬間と同じくらいスリリングな光景なのでしょう。物語を飛び越えて、キャラが立つ瞬間というのも、金塊の引換券であった通貨が、金塊の保証なしに流通する瞬間くらい、驚くべき光景です。


 キャラクターは、えー、物語方向と、図像・要素方向の二つのベクトルからなり、これらは排他的な要素ではなくて、それでもって合計してキャラクターの強度が導き出せる、そんな見解を持っています。ある程度以上の強度を持つと、キャラが立ちます。このへん、TRPGなんかを考えると話が早いですね。純粋なキャラクターは、マップの上に置いた、出来合いのコマ。マスプロダクトなそれは、もしかすると辺境の島を制圧するシナリオで、強いキャラクターになることができるかもしれないし、エルフ耳のイラストによって、強いキャラクターになることができるかもしれません。簡単にキャラを立てようと、分厚い金属の両手剣を持たせたりすることもあるでしょう。


 あ、なんか書き方に疲れてきた。まあ、シナリオ萌えと、属性萌え、そして関係性萌えがあって、ベクトル和が一定以上になると物語中でキャラが立ち、さらにある一定水準を越えるとキャラ立ちし、二次創作の材料になったりするんじゃないかと思っている。くらいんぐ☆ふりーまん、の例だと、まず「殺した後に涙を流す暗殺者」ということで属性萌えを現出し、それからシナリオ萌えをうみだしていく。同じ系統の、さんくちゅあり、でも、ヤクザにとって、「政治家秘書が親友」という属性萌えで話を始動させている。それから、シナリオ萌えに入っていったと解釈している。『子連れ狼』の、「拝一刀と大五郎のカップリング」は、第一には「乳母車というアイテム」への属性萌えを起点としているんじゃないかな。
 テヅカオサムなんかは、ブラックジャックのような属性萌えの作品もあれば、後期の「アドルフに告ぐ」のような、属性萌えを排除した作品もある。これは、属性萌えとシナリオ萌えの関係を見るうえでおもしろい。


 最近人気の少女漫画、を見ないで話すけど、キャラクターが立っているのは、シナリオ萌えと関係性萌えが成立しているが、キャラ展開が困難なのは、属性萌えが(あえて)不十分だからで、作者のシナリオと、作中の他のキャラクターとの関係性を抜きにしてキャラクターの強度を保つことができないからだろう。だから、映画ではなく、日曜午前中にでもアニメ化して、おなか一杯属性をつけてしまえば、自立するキャラを捏造することができるだろう。


 エロゲなんかでは、このへんもう属性のデパートで、羽の生えたリュックをしょって、タイヤキ泥棒で、こまるとうぐぅというヒロインが山のようにいるわけだ。あんまんとかにくまんとか栗とか。ただ、シナリオ萌えが無いと、なかなかキャラの自立が成功しないというのもおもしろい。あとは関係性萌え。システム上、主人公一人対、ヒロインズというツリー状の関係となりがちだが、ここにそれなりの脇役、を放り込むと、複雑な関係を作り上げる。はるはらとかフカヒレとか会長とか。


 
補足:
この、シナリオ←→属性(アイテム)というのは排他的なものでないと考える。例えば、シナリオでキャラクターが不幸な目にあったとする。それは、容易に縮退し、「不幸属性」と呼ばれたりする。ツンデレ、という属性が最近発生したのも記憶にあるだろう。また、「分厚い鉄塊のような両手剣」だと純粋な属性(アイテム)に分類できるが、「人間の血を吸わないと死んでしまう剣」であれば、それはシナリオに分類できるかもしれない(個人的には、作品で確定していないものはシナリオ萌えに分類したくないが)。さらに、過去、なんていうものは、シナリオの根源でもあるし、容易に取り外しできるということで、便利な属性(アイテム)でもある。


 
 と、「脳内立ち」と「作品世界立ち」を分けて考えることには賛成するが、排他的なものではないよね、という話。キャラクターのキャラ化、キャラの脳内固着については、また書く機会もあるかもしれない。キャラクターのキャラ化、同人・二次創作での隆盛に、「キャラクターの流動性の確認」を指摘した文章は非常におもしろい。
http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20060124/p1
「欲望の源泉は、他人の欲望である」という命題と同値なのかもしれないけれど、それだけでは以下の現象を説明できない。

プロ壁を除けば、サークルよりも、ジャンルの効果が大きいだろう。

要するに、プレミアは、キャラクターが別の絵で描かれていること。

このプレミアを、キャラクターの流動性として、解釈したい。

 同人誌として、オリジナルと異なる表現でなされた作品を求めることは、キャラクターの株式分割だったんだよっ。