シーケンシャルな読書は探偵小説が開拓

http://d.hatena.ne.jp/N31/20060115

本あるいは読書をめぐる世界の変質 粉川哲夫
http://www.honco.net/9809/ar-kogawa-j.html

W.J.オング『声の文化と文字の文化』(原著1982年刊。桜井直文ほか訳、藤原書店)によると、シーケンシャルな流れに従って前から後ろまで読み通すことは、19世紀の探偵小説において大衆的な規模で定着したのであって、印刷技術にはもともとそうしたシーケンシャルな読みという特質が潜在していたとしても、それ以前の近代の小説形式においては、印刷技術以前のオーラルな物語文学から継承された「挿話のパターン化」という性格が依然有力だった。したがって、探偵小説以前の小説は、いわばどこから読むことも可能であったのであり、読み通す必要はなかったのである。