"観察による手描きと再認を求める写真"

http://www.brh.co.jp/experience/exhibition/journal/45/talk_index.html

これは美術大学で教えているので分かるのですが、デッサンをするにはそれ相応の時間がかかるのです。例えば入学試験で、「自分の手を描きなさい」という問題が出たとします。基本的な課題といってもいいですね。自分の片手を木炭デッサンで描くのですが、手首から先だけでも最低3時間は必要でしょう。さらに実際の出題では「どういう手を描きなさい」という条件が含まれる。数年前に「重力を表現するような手を描きなさい」という出題がありました。すると、なぜかリンゴが描かれていたりして…。

例えばここにある、この角砂糖一つ描くのも大変ですよ。まず対象には、輪郭というものがありません。一つひとつ線を引いて輪郭をつくっていくのですが、見た人に、これが石炭のかけらでなく角砂糖だとわからせるには、どこかを省略し、どこかで強調しなくてはなりません。その判断は、あくまで描き、描かれつつあるものを見ている状態と不可分のものですね。デッサンとは見るという行為を通して、自分が見ている状態を生き直す過程です。

ちょっと追記:

これはリンゴではない
http://www.allposters.com/-sp/Ceci-n-est-pas-une-pomme_i382535_.htm?aid=425445