林檎の木理論

 情報とか、解答というのは、要するに林檎の実なんだ。
 ネットとか、雑誌とか、テレビなんかで流通しているのは、林檎の実。
 丸ごとだったり、籠に入っていたり、剥いて楊枝まで挿してあったり、ウサギのように剥いてあったりして、食べると美味しい。ちょっと林檎を見つけて、剥いておねぇさんのところに持っていくと、まあ偉いわねなんとかちゃん、と頭をなでてくれるけれど、それだけ。
 心の中の林檎の木を育てなくてはいけない。いや、いけなくもないけれど。頑張って木を育てて、実がなれば、それを市場に出す。ただ林檎を食べるだけなら、これは良作だ駄作だ星三つだ、と言える。でも、自分の林檎の場合、結構難しい。自分で頑張ったけれど、本当に美味しいの?美味しくないけれど、どうすればいいの?
 そう。問題になるのは、林檎の実じゃなくって、木のほうだ。そんなときには、他の人の―――できれば、美味しい実のなる人の―――林檎の木を見に行こう。すると、その木に比べて、自分の木が元気に育っているか、そうでないか始めてわかる。実だけを比べても、木の良さは比べられない。林檎の木、つまり自分の価値観とか、世界観を育てるには、やはり他人の価値観や世界観が表現されている、書籍を読むのも手段の一つ。勿論、他の人に頼るのも簡単な方法だけど。
 「え?甘い林檎が食べたいの?ほら、どうぞ」
 と食べているだけじゃ、木は育たないよ。他の人の木を書物で眺めるだけではお腹は膨れないけれど、大事なのは木を育てることのほうだ。美味しい林檎が実るようになれば、楽しみにしてくれるお客さんが出来るかもしれない。



 勿論、林檎農家でなくて、林檎屋さんになりたいのなら、ちゃんと林檎を磨いて店頭に並べ、POPを書いて、毎日営業しなくちゃね。